YouTube『教則動画』の歩き方

※久々の長文で乱文ですが…

YouTube 教則動画との付き合い方

私の生徒さんも例にもれずYouTubeで配信されているサックスのレッスン動画を見る機会が多いようで、たまたま見た動画で紹介されていた練習方法や『秘技』的な情報について質問されることもあるんです。

でね、そんな動画を見てみると『おう、いいこと言ってるね!!』というものから『あぁ・・そうそう、わたし若い頃はそう思ってたかもしれん、今思うとちょっと違うけど…』さらには『それ、個人的にはぜんぜんちゃうと思うんやけど…』というものまで、多種多様な動画が氾濫しとるわけです。
※あくまでも個人的な感想ですからね
これは『YouTubeの良いところ』でもあり『悪いところ』でもあります。

何かを始める時の情報源として

たとえば、私も今更だけど9月くらいから、時間のある時に株の短期トレードに手を出してみました。これまでは長期保有とか投資信託でしたから、それまで私の持っていた株の知識は20年以上前の錆びた知識で、短期トレードにはちょっと通用しない部分が多い感じでした。 9月に始めてからの殆どの時間は実際に取引はせずに、家のPC画面にはリアルタイムチャートや板を表示しといて眺めておりました。現代のシステムトレードやAIトレードがメインとなっている昨今では、恐ろしく目まぐるしいスピード感についていけませんでした。これは昔とはまっっったく状況が違うやん… それで、現代手法に則した書籍をあらためて読んだり、やはり手っ取り早い手段として、トレードに関する手法を動画配信しているYouTuberの動画を検索して、手当たりしだいに見てみました。
色々と見ていくうちに本当に有用な情報は、とてつもなく多い関連情報の一部にしかないと感じました。逆を言うと、無料で有用な情報を発信されている配信者もおられて、そういう配信者に共通しているのは株の丁寧な基本知識(後述する 根っこの部分)の説明動画も丁寧に作ってあり、さらにうまくいった経験談・失敗談(当たり前ですが 現在進行系で失敗経験しかない人の動画は見ませんよね。つまりは現在はある程度高いレベルに達しているであろう人の過去の失敗経験を聞きたいわけです。)から得た基本的+独自のリスクヘッジ方法や、心理的要因などを解説されています。

そして、必ず自身の経験値から得た内容を話す際には『これは私が経験から得た考えなのですが』と、注釈を言ってから話し始める方が多いと感じました。これで見ている側は『ここからは経験則なんだ』と認識してから視聴できます。

私が株の知識を更新するためにYouTube動画を見たように『サックスをうまくなりたいから、教則本なども読み漁り、さらにYouTubeレッスン動画を見まくる状態』と同様です。
上で『YouTubeの良いところ』 と書いたのは、昔は公開レッスンや実際に対面レッスンなどを有料受講して得られた情報が、動画で無料で手に入れることができるということです。

ちょっとした視聴時の心がけ

基本的に動画配信している人物は、その動画テーマに関して『克服している人、もしくはある程度克服している人』であるという点です。『サックスをひとより歴が長く・経験値が高いから教えている』とか『株で利益をあげているから自分の投資手法を教えている』ということです。

ここで注意しなくてはならないのは、昨年から続くコロナ禍でYouTubeの様相が一変してしまいました。誰でも気軽に配信できるメリットが、受け手にとっては情報過多となりデメリットともなっている場合もあります。『克服している人、もしくはある程度克服している人』 の動画の中には、言っている内容は概ね間違えてはないけど、解説方法が見る人によっては大きな誤解を生みそう…な動画がけっこうあるように感じています。

動画から得るところも沢山あると思いますが、それが全てではない事と、自分が理解したと思っていても、曲解している可能性があることを、視聴者自身は絶えず意識することが重要だとは思います(これむずいですけどね)。


たとえば

わかりにくい例えになりますが…たとえば子供さんに『勉強はしておきな』と言う大人たちを想定します。まあ、みなさんも子供の頃に。少なからず言われたと思いますけど。それを聞いた子供は『大人は口を揃えて同じこと言いよるな』と思います。

ここで『勉強はしておきな』 と言った大人が
■通りすがりの全く知らんオッサンに言われた
■苦労している身内に言われた

全く逆に 『勉強はしなくてもいいから探究心を忘れるな』と
■ビル・ゲイツに言われた とします ※ご本人はこんなこと言ったことはないと思うけど

まったく受けとり方が変わってくると思います。まあ、極端な話ではありますが…。
ゲイツさんがそんなこと言ったかはどうかは知らないですが『勉強はしなくていいから』の中に『もちろん探究心を持つには学ぶ必要があるけどな』という意味も含んでいるように感じるのは私だけでは無いと思います。そのまま受け取って『勉強しなくていいんだって!!』とはなりませんよね笑
これは、発信者の立ち位置によって受け手の捉え方が全く違うということをいいたいのですが、発信者がどの目線から発言しているのかよく分からない場合のあるYouTubeの世界では、いいも悪いも、様々な立ち位置から発信されている動画が、ゴチャゴチャと混在していています。なんとなく流し見していると、更に見分けがつきにくい世界が広がっています。

『いろいろな人の教則動画を何本も見ていくうちに、結局なにが正解かわからなくなってしまい余計に迷いが…』状態に陥るわけです。ただ、それは『楽器練習の多様性』であるのも事実で、その配信者にとって、その時点で発信している内容は、だれも間違った事を教えようなんて思っていませんから、後で言う『 基本的な根っこの部分 』的な内容の動画以外では、配信者がその時点での自己中心的思考(独自理論)が大きな影響を及ぼします。しかし、それは至極当然なことでもありますし、悪いことばかりでもなく、動画視聴から自分に見えなかった新しい視点を得る手段の一つとなっていることも否定できません。

基本的な根っこの部分

ただ、本来、サックス演奏に限らず、楽器や色々な事柄には基本的な根っこの部分というのが存在するのはお分かりでしょう。
みなさんの職業に置き換えてみても、駆け出しの頃はその職種の 基本的な根っこの部分 を勉強することに多大な時間をかけ、今でもその経験・知識が役立っているのではないでしょうか。
新人を見て『あぁ・・わしも昔あそこ苦労したわ』と感じるわけで、自身がそれを克服した方法を教えるわけです。ただし、ここで重要なのは『苦労しているのをしばし眺めてから解決策候補を何通りかアドバイスする』ということです、問題にぶち当たる前に先に解決策を提示しても、当の本人は苦労を重ねる前なので、その重みを感じることはまったくできません。
あーでもない・・こーでもない・・とモガイているのを暫し放置して『そろそろかな』とタイミングが来たら手を差しのべるのは、将来起こる似たような問題に対応する力をつけてほしいからなのです。

基本的な根っこの部分の動画 というのは、サックスでいうと『サックスを演奏するにはマウスピースとリードが必要です、マウスピースというのは…・姿勢は・ホームポジションというのは・タンギングは…・運指は…』みたいな『サックスの基礎についての内容』という動画です。よく楽器メーカーさんが配信してくださっています。
基本的な部分というのは誰しも重要なことはわかってますけど、いざそんな動画を視聴するとなると、サックスを始めて少し経過した人は『そんなん知っとるわ』と、退屈に感じてしまいますよね。
更に配信者側からしても、そんな『誰でも知っているであろう飽きられやすい動画』は視聴者数を期待できないので、あまり作らないとは思います。
で、もっと難しい動画とか配信者の独自の『秘技』を解説した動画が多くなっているのも事実です。
『秘技的動画』 は悪いことでは無いと思いますが、例えば私もリードの付け方一つにしても『ヘタってきたリードだとこの位置』とか『リガチャーの位置もこのリードだとこの位置』とか調整したりしますが、これは『基本的な…』の内容ではなく、応急処置的な回避策でしかありませんから、それを対面レッスン時、ある程度の経験者に向けた『余談』扱いの内容です。
すなわち、これは『正しいリード位置の基本的な根っこの部分 』 『正しいリガチャー位置の基本的な根っこの部分 』を習慣化して、そこから膨大な経験に基づいて得た『感覚経験値』であるということです。

『感覚経験値』は人それぞれですから、 『感覚経験値』を一見『基本的な…』と錯誤させてしまう言い回しで配信してしまうのは非常に危険です。配信者と違う’歴’・使用マウスピース・リガチャー・リードだと受け取り方は全然違ってきますし、なにより配信者とあなたは別人ですから、骨格・アンブシュアなどなど、それらを全部含めた環境依存要素を排除することは不可能です。すなわち、他の誰かの 『感覚経験値』 を参考にしても、自分とは経験値も何もかも違いますから、参考程度とする方が無難だとは思います。※ 『感覚経験値』 に基づいたセッテイングの変更などは、その日その時の楽器を含めた道具の状況に合わせるということなので、永続的なことでもないということです。
そういった意味で 『感覚経験値』 を元にした内容は、サックスという楽器の共通要素である『サックス演奏の基本的な根っこの部分』に昇格することはありません。

(自分だけの)経験値ピラミッド(頂点は平坦で広いけどね)

ここで 『基本に昇格』 という言葉を使ったのは、上達をピラミッド形状で考えるとすると、一番下の土台部分に 『基本的な根っこの部分』 があり『基本をしっかりと』というのは、耳にタコができるほど聞くでしょうし、楽器以外の経験も同様ですから、自身でもわかっていると思います。そして、ピラミッドは上達していくほど頂点に向かっていくように想像すると思います。その 『基本的な根っこの部分』 というのは、位置的には最下段ですが、それが重要なことは誰の目にも明白です。
※ここで言うピラミッドは、経験値のピラミッドです。

この図ような、誰でも容易に想像できるピラミッド形状だと思いますが、 土台部分 である『基本的な根っこの部分』 というのは既に楽器を始めた人にとっては『基本=基礎練習・基礎知識』とは何かということは既知であり、手元にあるであろうサックス初心者向けの書籍にも書かれていますから、わざわざ時間を割いてそんな動画を見ませんよね。『基本的な根っこの部分』動画を見たとしても練習しないと土台が強固にはならないことも知っていますしね。
では、動画という目から得る情報として面白いのは、視聴者自身のその時点を頂点にした、視聴者自身の経験値ピラミッドより更に更に上方にある、別の人のピラミッドから配信された内容に興味を抱くのは間違ってるとは思いません。しかし、それは配信者(別の誰か)自身のその時点を頂点としたピラミッドからの発信であるということを絶えず意識する必要があると思います。

私も 経験値ピラミッドを登り始めて36年ほどになりましたが、 経験値ピラミッドというのは『自分のいるその時点が絶えず頂点となっているピラミッド』である事に注意しなくてはならないと思います。
また、その時点での経験値ピラミッドの頂点からは、更に上にピラミッドを伸ばすための伸びしろが絶えず見えますから、ピラミッドの頂点というと、なんや三角錐で尖っているイメージですが、本当は意外と面積の広い平坦な場所でしかないわけです。


そのピラミッドは、将来のある時点を頂点として積み上げ更新され続けるということでして、例えば私が26歳くらいの時に『わたしの26歳時点を頂点とした経験値ピラミッド』で人にレッスンを始めた頃に、タンギング一つとっても『こうだ!!』と思っていたことと、現在ではけっっっこう考え方違っています。これは経験値ピラミッドが27歳のころより高くなってきて、27歳の時点を頂点とした経験値ピラミッドは、現在を頂点とした経験値ピラミッドから見ると、小ぶりピラミッドでしかなかったわけで、継続していれば、そうなるのは至極当然なことだとは思います。
そういう意味では、自身の将来のピラミッドから見ると、過去の自身のピラミッドはすべて小ぶりピラミッドとなります。
ここで、ひとつ間違えたらいけないのは自身のピラミットと別の誰かのピラミッドは 『基本的な根っこの部分』 は共通ではあるけど、積層内容やサイズはマチマチですから、他人と比べる事はナンセンスでかありません

(強引な)まとめ

とても、分かりづらい内容を書いていますが、なんとなく汲んでもらえると助かりますけど…汗
結局一言でまとめると『情報選択能力』がさらに必要な時代になったということですね。

どうせ見るなら経験値ピラミッドの超大きな人の動画を探してください。容易に想像できるように、著名なサックス奏者の方が配信されている動画は、私のピラミッドよりさらに大きなピラミッドから発信されているので、私がなんとなく感覚で感じていたことを、言葉として発信されていたりします。そんな超巨大なピラミッドから配信されている方は、往々にして 『基本的な根っこの部分』 を大切に解説された上で、ご自身の経験則を付加して解説されていたりと、とてもためになる動画もたくさんありますからね。ですから、視聴者サイドでしっかりと情報選択すれば、YouTubeを活用することは非常に有用なのは間違い有りません。かんたんに情報選択するとしたら、自分が知りたい分野で、日本や世界の 一流・超一流 の方が配信している動画であるかどうかを基準にすると良いと思います。こんなこと書くと、わしの動画は見てもらえんようになるけどな笑

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